富山県 宇奈月ダム


富山県・黒部川。日本でも有数の急流河川で、北アルプスの急峻な山からの土砂が大量に流れる川。

そのため、ダムは貯水容量を確保するために、ダムに流れ込む土砂を排出する機構が必要だった。

それが宇奈月ダムに(上流の出し平ダムにも)装備された排砂ゲートである。

17年ほど前、宇奈月ダムが完成する以前に、出し平ダムで最初の排砂放流が行われたが、この時は冬の水が少ない時期にダムの底の土砂を流したために、深刻な漁業被害が出たという話は聞いていた。

そして排砂はヘドロで悪臭もすると聞いたが、毎年そんなことをやっているとも信じられないので、一度自分で確かめなければと考えていた。人から聞く情報は偏向している可能性があるので、やはり自分で確かめなければ鵜呑みにはできないのだ。


最初の遭遇


最初に宇奈月ダムの放流に遭遇したのは、確か2004年の福井豪雨があった日、2004年7月18日のことだ。

この日は週末で、前日の17日から私は岐阜県の飛騨川沿いのダムを巡っていたのだった。17日はとても良い天気で、とても次の日に大雨が降るとは思ってもいなかった。

17日の夜、私は高山市内に宿をとった。そこでモバイルパソコンをPHSでインターネットに繋いだところ、福島県の田子倉ダムや奥只見ダムが完成後数十年経って初めて、ゲート放流を行っているという情報が飛び込んできた。

これらのダムが放流するとは尋常じゃない事態だと感じた。これらのダムは大規模な発電所を持っているので、普通の洪水は発電機を回すだけで放流できるのである。

発電機を回せば電気が作れて収入が得られるのだから、発電機を通さないゲート放流はお金を捨てる行為だから、そんなことは考えられない。

という事はつまり、発電機をフルパワーで回しても使い切れないほどの洪水が発生していることを物語っていた。

こちらは現在、岐阜県高山市。ここから富山に抜けて北陸道を走れば奥只見ダムには行けるのではないか? スケジュールを急遽変更した。

今考えれば無謀な距離だ・・・19日の朝には和歌山に戻って出勤しなきゃならないわけで、どんなスケジュールを立てているんだよと。

とりあえず夜明け前には起きるようにアラームをセットし、仮眠を取った。

18日の未明、インターネットで雨雲レーダーを見ると、日本海側には所々に強い雨雲が掛かっていることが分かった。

しかしこのときの目標はあくまで奥只見ダムだった。

国道41号線を富山に向けて走らせる。途中にある神1、神2、神3ダムなどに立ち寄りつつ・・・

そして富山ICから北陸自動車道に入った。そこで新潟方面に走っている途中で、黒部川の排砂放流のことを思い出したのだった。

「今日は放流を見れるチャンス??」

黒部ICで高速を降りて宇奈月ダムに向かった。

途中の川沿いの電光掲示板は宇奈月ダム放流中という表示が出ていた。

放流中の宇奈月ダム

キターーーー!!!

放流中の宇奈月ダム

何ぞこれーーーー!!!

実はこの時、宇奈月ダムのたくさんあるゲートを把握していなかったので、これが排砂放流だと思った。

これから排砂放流にたどり着くまで3年も掛かるとは、このとき思いもしなかった。

宇奈月ダムゲート構成

宇奈月ダムゲート構成

実は、このとき排砂放流は行われる予定だったんだそうですが、予想以上の大雨で洪水調整の必要が出てきたため、排砂放流を延期して洪水調整の放流操作を行ったようなんですね。

で、午後から排砂放流が行われたそうです。私はその頃、奥只見ダムに行っておりました。しかし奥只見ダムの放流は1時間以内で終わっていたそうで・・・

結局、18日は17時頃に新潟県の小出を出て、翌朝の5時ごろ和歌山まで帰り着きました。その後そのまま出勤しましたですとも。


二度目の挑戦。そして・・・


そして時は過ぎ、2005年の初夏・・・富山県地方に梅雨末期の大雨が。

ちょうど休みが取れたのですが、この頃は自家用車が故障で使えない時期でした。富山までどうやって行くか。大阪から特急サンダーバードで行くか、高速夜行バスのいずれかを使うことになります。

特急だと、始発電車で乗り継げば富山に午前中に着きます。夜行バスだと翌日になります。

今までの排砂放流のパターンから、排砂放流そのものは長くても12時間程度だと考えました。どちらの交通機関を使うかが勝負の分かれ目でした。(現地に宿泊すればOKなんですけどネ! 都合で宿泊までは出来なかったのです)

そしてこの時、またしても判断ミスをしました。この時、特急で現地に向かいました。そして見たものは・・・

宇奈月ダムクレストゲート放流

激しくクレストゲートから放流しています。これはこれで凄いけど・・・

排砂放流はダムを空っぽにして行います。が、クレストゲートから放流するということは、ダムは満タン・・・夜行バスで翌日行くべきでした。実際、翌日に排砂放流が行われました。


三度目の正直


そして時は流れ、2006年初夏。

その前日、仕事から帰ってくると某氏から電話が掛かってくる。宇奈月ダムが排砂体制に入ってるよという内容だった。

私はこの頃、仕事が忙しくてダムどころではない状態だったので、完全に宇奈月ダムはノーマークだった。

宇奈月ダム公式ホームページを見ると、確かに排砂放流の体制に入っていた。どうやら黒部川流域では梅雨末期の大雨が降っているようだ。おそらくいつもの流れで考えると、明日の朝には排砂放流が行われると考えた。

そして偶然にも翌日は仕事が珍しく休みの日だった。もっとも、その翌日はまた仕事なんですけどね。

さて、こういう条件が揃えばやっぱり行くしかないでしょ。でも突然なので夜行バスのチケットは取っていないし、そもそも出発時間まで間に合わない。明日の特急サンダーバードだと現地到着は昼になるので、初動が遅れる。

自動車で行くしか方法は無いのか・・・仕事から帰ってきてそのまま寝ずに夜行? 運転手は私だけよ??

まあコーヒーでも飲みながら行けばなんとかなると、見切り発車が前日の21時ごろの話でした。

途中、名神高速の多賀SAか北陸道の賤ヶ竹SAあたりで3時間ほど仮眠を取って、翌朝7時には宇奈月ダムに到着。

「おおおお、排砂ゲートから放流してる〜〜〜〜♪」一気に疲れも何もかも吹き飛ぶ。

排砂放流

ずっと気になっていたヘドロのにおいだけど、ぜんぜんしない。いつも放流で味わっている普通の土の匂いだ。

そしてビデオ撮影に熱中して、デジカメで静止画をほとんど撮っていないことに気付いたのは家に帰ってきてからだった。

その後、せっかくなので黒部峡谷鉄道に乗って上流の出し平ダムや小屋平ダムの放流も見てきた。電車が走っている中からなのでちゃんと撮影できなかったんだけどね。

電車を往復した後、再び宇奈月ダムに戻ると、どうやら排砂放流も終盤らしい。いつの間にか排砂ゲートが閉まって、水位低下ゲートから排砂後の措置として行われる放流(泥を洗い流すためきれいな水を流す?)が始まっていた。ゲートが閉まる瞬間を捉えることが出来なくて残念。

この時、時刻は17時ごろだったかな。

そういえば放流に熱中していたけど、明日は朝から仕事です。せっかく宇奈月に来たので、宇奈月温泉の共同浴場で熱いお風呂に入って帰ろうね。

・・・帰りは本当に後悔しました。一人で日帰り和歌山ー富山のドライブは遠すぎます。特急サンダーバードがどれだけ凄いのか味わいました。遠いわマジで。

気力を振り絞って、SAPAごとに短時間の仮眠を入れつつ、和歌山の会社の駐車場にたどり着いたのが未明の3時ごろ。正直言って、近畿道に入ってから和歌山へどうやってたどり着いたのかはっきり覚えていません。

気がついたら和歌山ICでお金を支払うところでした。

もう無理なスケジュールの運転はしないよと激しく反省した一件でした。

そのまま会社の駐車場で仮眠して、定時に出勤。

御安全に!!

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